無題
作.橘 杏樹様
自室のベッドの上で少女は、目を覚ました。
いつもなら・・・一度も目覚める事なく、朝まで眠っているのが常
それが・・・物音すらしない部屋で何故・・・
不安を胸に抱きながら少女は、もう一度寝付くことにした・・・が、
なかなか寝付けない。
仕方無しに少女は、窓辺に向かい夜空を見上げる。
「星が沢山・・・とても綺麗ですわ・・・」
少女は、おもむろに真っ白なコートを羽織り、
足音を立てぬように、外へ出る。
たどり着いた先は・・・
むせ返るような香り立つ薔薇の園
色取り取りの薔薇が咲き乱れる中、
少女は、辺りを見渡して、
「ほおぉ」と息をつく
その少女を遠くから見つめる人影があった。
「クックッ」と笑いを噛み殺している。
「なに笑ってるんだ?セイル」
この国の皇太子であった。
「いや・・・なに、あれ・・・だよ」と
ちらりと少女の方を見やる。
「えっ・・・あれって姫さんじゃないのか?」
「ああ、そのようだね、どうしたものかな?シオン」
「ハァ・・・どうしたもこうしたも、この場所がいかに安全だろうが、
姫さんも王族だろ・・・という訳で、セイル行って来い。
おまえさんの方が、姫さんも言うこと聞いてくれる。
それじゃ、俺はあっちで待ってるからな」
薔薇園の入り口を指差し、シオンは歩いていった。
「やれやれ」とつぶやくと、少女に近付き、
「こんな夜更けに、何をやっているんだい?ディアーナ」
ニッコリと優しげな笑みで、気配を殺し近付いて言った。
「キャッ」
小さな悲鳴をあげ、恐る恐る振り返る
「お兄様」
正体が判り、安心するが、
「ディアーナ、私は何をしているのかって聞いているんだが・・・」
「あうぅ・・その〜」 後が続かない・・・
怒られると思って言い出せない・・・
「言ってごらん」
「眠れないから・・・お散歩に・・・」と言って、逃げ出そうとした。
そのディアーナの手を、セイルは掴み
「ディアーナ・・・このまま一緒に、散歩をしようか?」
「本当ですの?お兄様」
「ああ、勿論だよ、ディアーナ」
「わたくし、とっても嬉しいですわ」
その後
散歩を堪能した二人が、入り口に居るシオンに、説教されたのは言うまでも無い
(何故かって・・・それは寒空の中、数時間二人を待つ羽目になったからさ)
キリ番リクの創作のお返しに、と頂いた小説です♪
とっても素敵なので思わず掲載を決めてしまいました。
夜道を二人でお散歩するセイルとディア…(うっとり)
さりげに出ているシオンも結構好きです(^^)
橘様、素敵なお話をありがとうございました♪